多世代交流施設という言葉は、聞き慣れない言葉であると思うが、それは保育所や小学校などの子どもの施設と高齢者福祉施設とを複合・合築することにより,世代間による交流が持てるように工夫した施設である。私達は今後、この施設に注目したいと考えている。
ご存じのように、新ゴールドプランでは高齢者福祉設の整備が進められているが、都市部における整備遅延が影響し、全国的にはやや達成が遅れている。一方、複合化による土地の有効利用、およびエンゼルプランによる保育所の多機能化が推進されつつある状況から、厚生省は平成5年に高齢者福祉施設と児童福祉施設との合築・併設を促進するよう通知している。
核家族化により、子どもたちとお年寄りが触れ合う機会が少なくなっている現在、世代間による交流はさまざまな効果を生む。お年寄りは子どもたちと触れ合うことによって,日常生活の中で生きがいを持つことができ、子どもたちにはお年寄りへの思いやりの心が芽生える。また、経験を重ねてきたお年寄りとともに過ごすことで、遊びを含む日本文化を子どもたちは自然と継承していく。
さらに、土地の有効利用、複合化による空間の共同化、設備の集約化による消費エネルギーの低減などハード面でのメリットも大きい。また、このような多世代交流施設が地域社会の核となれば、利用者の交流が促進され、お年寄りの社会参加の機会も増加するものと期待される。ただ、複合施設ゆえに発生する運営管理の責任分担や施設内での病気感染などの課題は多い。
しかし、私たちはこのような多世代交流施設がお年寄りと子どもたちにとってより良い環境づくりの具体策の一環となることを期待する。
[昭和設計 道家幸子]
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