■第102回■ 長屋

 日本各地の密集市街地には旧来の町並が現存します。その中でも長屋は伝統的な都市型住戸のひとつです。
  長屋の特徴には、各住戸の狭小性、数軒の住戸で一構造を成していること等が挙げらます。構造上重要な壁に関しては、プランの制約上間口方向では量が少なく、全面道路側の玄関や店舗等のために偏在配置されている場合があります。また、床面は現代的な木造住宅と比べて柔らかく、柱梁仕口に金物が用いられていない場合も数多くあります。このように述べると長屋の短所ばかりが目立ちますが、個々の住戸の狭小性については数軒が一体になることで解消されていますし、近年の研究では伝統的な木造建物は地震に対してしなやかに揺れることが確認されており、これらは長屋の長所と言えます。
  ところで、築後年数の長い長屋は、老朽化や居住性等の理由からしばしば解体されています。その際、一部の住戸のみ解体され、残りは使用されることもあるようです。もっとも、居住性やその他の事情により、長屋が現存し続けることは難しい状況にありますが、コミュニティの維持や町並保存の観点から、長屋の保存・再生が望まれます。
  既存の長屋を現代に蘇らせるにあたり、意匠、設備上の検討もさることながら、構造上の検討が十分になされることが大切です。現在、伝統的な木造建物に対する耐震補強法が確立されつつある中で、長屋の長所を生かした補強がなされることが期待されます。

[建築情報委員会 山田 明]