現代の科学・技術は素人の理解を寄せつけないブラックボックスである。建築界の構造設計の偽造をはじめ食品、医薬など枚挙にいとまのない不正の温床は、ブラックボックスの落とし穴でもある。 中でも理論物理学は際立った隔絶性をもっており、説明責任を果たすことは重要である。ランドール博士は、深遠な理論の解説に日常のエピソードや比喩を織り交ぜて、考える楽しみを読者と共有できるよう情熱を傾けている。100年前の相対性理論に始まり最先端のひも理論までエスコートし、600ページの著作の頂点で自らの多次元時空理論を開示している。 今日の位置情報システムのGPSに一般相対性理論が応用されていることはあまり知られていない。SFの描くタイムマシンなどを想起しながら、新理論の意外な開花を夢みたいものである。 [建築情報委員会 山田 宗彦] |