ノンポイント(非特定)汚染

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 都市域の河川、湖沼の汚染原因となる汚濁負荷には、工場、事務所、家庭などから流出する排水のように、汚濁負荷の発生源が特定されているものと、降雨に含まれる汚濁物質や屋根、道路、舗装面などに堆積した汚濁物質などのように排出源が面的に広がり、発生源を特定できないものがある。前者が特定汚染源、後者がノンポイント(非特定)汚染源と呼ばれるものである。
 近年、水質規制や下水道整備、排水処理施設の整備が進んでいるにもかかわらず、閉鎖系水域である湖沼や河川の汚濁負荷が減少していないのは、特に都市域でこのノンポイント汚染源の占める比率が高まっているためである。関西では、典型的な閉鎖系水域である琵琶湖のノンポイント汚染が問題化している。
 ノンポイント汚染源となるのは、大気中の浮遊物質(排気ガス、煤煙、粉塵など)が道路面や建物屋根、舗装面などに堆積したものである。スパイクタイヤによって発生する粉塵も汚染源のひとつである。これらは、降雨時に雨水とともに河川や湖沼に流出し、水域を汚染する。
 建築計画や都市計画においてとるべき方策として、まずは、浸透性の低い舗装面をできる限り減らすことである。地表面の浸透性が高ければ、汚染源があったとしても地中浸透によって、かなりの汚濁物質が除去される。
 次に、屋根面、舗装面などの雨水排水を一時的に貯留することである。水路や水槽に一時貯留し、汚染物質を沈殿させてから上澄みを放流することによって、ある程度、流出を抑制することができる。貯留された雨水は、比較的簡単なろ過をかけることで、雑用水や植栽散水、修景用水等にも利用できるため、水資源の有効活用、節水という観点からも、有効な方策となる。

〈日建設計 設備設計室 丹羽英治〉