デューデリジェンス

 現在、日本はバブル崩壊後、様々な社会構造の変革を余儀なくされている。この変革は当然建築にも及んでいる。日本では不動産価値として「土地神話」が脈々と受けつがれ、不動産投資は地価の上昇を基本に考えられていたが、21世紀を前にこの神話が崩れた。と同時に日本では建築寿命が30〜40年のサイクルであったスクラップ&ビルトの構図が地球環境問題とともに見直されつつある。建物の長寿命化、またストック&リノベーションを指向する傾向が生まれた。さらに建物が、一個人、一施主の財産から、世界中の投資家の投資対象となりつつある。
投資家が建物に投資する際、その建物および建物を取り巻くあらゆる価値を調査する必要がある。「デューデリジェンス」とはこの詳細な調査を指す。
バブル崩壊が日本より早かった米国では、ビル所有者が実質経営を手放すとき、デューデリジェンス業務を専門とする企業が投資家に不動産価値を提示することに活躍し始めた。日米では不動産関係の事情が多少異なるが、外資系の投資家が、日本向け投資に向かいつつある今、このデューデリジェンス業務を専門とする企業の増加、欧米からの進出が予想される。デューデリジェンス業務には、物理的な調査、法的な調査、市場調査、不動産経営状態調査などがあり、各々、細かい調査項目が含まれる。その物理的な調査には建物内外装の仕様、設備関係の仕様、耐震性能や地盤状況などが含まれている。
建築に携わる我々は、今後、長寿命化を目指すにあたり、投資家の前に提示されるデューデリジェンスによる価値判断は無視できるものではない。また、我々がデューデリジェンス業務の建築的調査に携わる場合、投資家の社会資本への投資判断に結びつける非常に重要な責務を担うことを認識しなければならない。

〈日建設計構造設計室 阿波野昌幸〉