リテラシー

 「情報リテラシーの向上」などという言い方がされている。「リテラシー」とはそもそも読み書き能力の事で、明治以降の日本の公教育は国民のリテラシーを大いに向上させてきた。情報リテラシーとは、世の趨勢としてIT関連機器を操る能力、またそれらを使って各種の情報を素早く入手・発信する能力の意味で使われている。従って小中学校でもIT教育が必要ということになってきている。
しかし、一方の能力の向上は、別な面の能力を削ぐ結果となることも多い。例えば、パソコンで文章を綴る様になって、手書きで文章を書こうとした場合には漢字がなかなか思い出せない事をしばしば経験された方は多いはずだ。もっとも私の場合には、それは年のせいも多分に有るかもしれないが。しかし、文字の出現以前は、伝承という形で過去の出来事が連綿と記憶されて来たが、文字で残されたとたんに記憶し続けることをやめてしまったことも人類の歴史の中で有った。記憶する必要性が無くなったと言ってしまえばそれまでだが、小中学生が漢字を書けなくなってもよい訳ではない。最近の若者の活字離れと云うことに鑑みると、「読み」「書き」ともに能力が低下する可能性も大きい。
漢字検定試験を受ける人達が増えているという話を聞くが、これもIT頼みによる漢字書き取り能力の低下に危機感を抱いた人達が挑戦をしているのではないかと思わないでもない。もっともこれこそリテラシーの増強に違いないが。ITによる情報処理能力と従来からの読み書き能力との双方がバランス良く増強されなければならない。また、有り余る情報の中から本当に必要な物を選別する能力も必要になる。

      〈(株)アール・アイ・エー 大坪 明〉


<片倉 健雄〉