耐震改修促進法

大地震がいつどこで起こっても不思議ではないと言われる地震国日本ですが、阪神・淡路大震災までは、少なくとも西日本では大地震は起こらない、仮に起こったとしても高い耐震性を誇る日本の建物は倒壊しないと思い込んでいた人が多いのではないでしょうか。
 阪神・淡路大震災で、見事に覆されましたが、現行の耐震基準である「新耐震設計法」により設計された建物の被害は小さく、「新耐震設計法」以前の建物の被害が大きいことがわかりました。このため、現行の耐震基準を満足していない既存建物の耐震改修を促進しようとする『耐震改修促進法』が1995年に制定・施行されたのです。正式には「建築物の耐震改修の促進に関する法律」です。
 多数の人が利用する一定規模以上の建物において、現行の耐震基準に適合しない建物所有者は、耐震診断を行い、必要に応じ、耐震改修を行うよう努めなければならないというものです。耐震改修を行うに際し、行政庁の認定を受ければ、法律上の特例が認められたり、低利融資を受けることもできます。
 この法律には、行政庁が建物所有者に耐震診断・耐震改修を行うよう指示できるとあり、指示に従わない場合の罰則規定も設けられていますが、改修工事費等の問題のためか、行政庁も「民」の建物所有者には強制していないようです。税金で耐震改修工事ができる「官」の建物は別として、この法律が「民」の建物の「耐震改修を促進」しているとは言い難いものがあります。
 スクラップ・アンド・ビルドより良質なストックの形成へと時代が転換していく中で、建物のリニューアルは重要な位置を占めていくと考えられますが、この不況で、「民」の建物では耐震改修にお金が出せないのが現状です。景気が回復しないと耐震改修も促進されないのでは、と思う今日この頃です。

〈(株)安井建築設計事務所構造部 坪根正幸〉