日本語では『説明と同意』と訳されていますが『――その考え方』と解釈しています。 医療の現場で医師は必ず患者に対して病状を説明し、患者の同意を得た上でしか治療しない、という考え方で処置方法も患者自身に決定する権利があるというものです。 私共でも建築主と初めてお会いした時には、この『インフォームド・コンセント』を心がけて仕事の進め方や考え方を十分説明するようにしています。 設計業務、監理業務とはどういうことか? 何を含むか? 請負契約と委託契約の違いは? 設計料の算出方法は? など口頭だけではなくコピー文書にしたものも渡します。仕事を進めながらでも、建築主の判断範囲や決定内容を文書でいただくようにしています。設計者仲間に聞くとまだまだ「任せてくださいよ!」というタイプも多いですし、そういったことは多大な手間がかかるとかで結構、中途半端に進めている場合が多いようですね。建築主側も役割や責任をまっとうしたことで納得し、完成時の満足感にもつながるものです。専門資格者としての責任と設計者としてのリスク回避を考えてもこれからの時代は特に、この考え方が必要かと考えています。 こういった個々相手の説明が我々建築士の業務や役割を広く啓蒙していく機会でもあるのでしっかり自覚しないといけないですし、建築主側も建築の知識や情報を常識的に持つことが『インフォームド・コンセント』の考え方の根底と言えるでしょうね。 [中村伸二・建築研究所 中村伸二] |