2001年5月、小泉首相を本部長とする内閣直轄(内閣官房)の「都市再生本部」が設置された。都市の魅力と国際競争力を高めるため、官民が協力して行動するさまざまな具体的プロジェクトが、構造改革を目的とする効率性の重視と民間主導をキーワードに実行に移される。 ここでとられる再生手法は、魅力を失い競争力が低下した地域に政府が民間都市開発と一体となり(PFI手法の展開等による)、インフラを整備し必要に合わせ規制を緩和することで、その地域の利便性と付加価値を高め、優れた開発の誘導を促進するというものである。同年9月に民間プロジェクトの提案の受付を行ったところ、民間・地方公共団体から300件を越す提案があったことが、再生本部から報告された。 そこで重要となるのは、今まで進められた甘い需要予測に基づく過剰投資によつて「負の資産」となりつつある開発等と異なる提案をどのように進めるかにある。都市再生の目的を簡単に言ってしまえば、「誰もが安心して長く住めて働きやすい都市にするため、良質な都市の資産を形成する」と考える。それには限られた予算を本当に必要かつ有効なもので、設計・建設からその後の運営に至るまでトータルに計画された提案に投資されなければならない。また都市が持続的に発展しても環境が損なわれない「広域循環都市」の実現も視野に入れる必要がある。 今、都市の再生を進める上で、日本の状況は経済を含めかなり厳しいものになっている。将来の不確実さは増すばかりで、都市再生に携わる私たち設計者としての役割は多岐にわたる。本来の進むべき方向を官民のへだてを超え、知恵を出し合い、構築していく必要がある。ぜひ優れた都市資産を次の世代に残したいものである。 〈安井建築設計事務所 水間茂〉 |