高透過ガラス

最近、ブランドショップのショーウインドウに高透過ガラスを採用する事例が多くなってきた。これは、従来のミュージアムガラスと呼ばれるもので、ピルキントン社(英)やサンゴバン社(仏)が製造、博物館や美術館のショーケース等に用いられてきた。最近、日本でも大手ガラスメーカーで製造が開始された。
ガラスの主成分は珪酸SiO2である。珪酸だけでもガラスは出来るが、溶融するために非常な高温(1713℃)を必要とする。製造を簡単にするため、つまり融点を下げる(1600℃)ために、ソーダNa2Oを入れる。珪酸とソーダだけでは水に融けて水ガラスになる。そこで石灰CaOを使って水に融けないソーダ石灰ガラスをつくる。普通の板ガラスの主成分はこの3つである。
現在のフロートガラスは、珪酸SiO2(主成分)、ソーダとカリウムNa2O+K2O(融点を下げる)、石灰CaO,マグネシアMgO(水に融けにくくする)、アルミナAl2O3(弾性率と硬度を増加する)、酸化鉄Fe2O(泡をおさえる)を原料としている。
高透過ガラスはこの内の鉄分(酸化鉄)をなくすことにより、透過率を高めたものである。鉄分をなくすとガラスの青みがなくなるが、ガラスに泡がでやすくなることと、製造時のガラス温度を保つために通常より釜の温度を高めにコントロールする難しさがある。
通常フロートガラスは厚くなるほど可視光透過率が低下する(5ao:89.3%、10ao:86.7%、19ao:83.3%)が、高透過ガラスの場合はほぼ一定の透過率91.8%となる。ガラスの青みがなくなり透明感が増す。これにより、ショウウィンドウのなかの商品の色が実物により近くなり訴求力が向上する。またガラス小口の青みがとれ、リブガラス工法等ではリブの存在感が薄められ、より透明感を得ることが出来る。コストはフロートガラスに比べ2倍以上(厚さにより異なる)するが、今後、採用が増えるものと思われる。

[竹中工務店設計部 豊永秀男]