テンセグリティ

テンセグリティ(tensegrity)とは、張力(tension)と完全無欠(integrity)という二つの言葉から作られた造語である。連続した張力要素と不連続な圧縮要素の結合により、全体が一つの構造体(張力統合体)となる状態を指す。
この造語は、「宇宙船地球号(Spaceship Earth)」の提唱者として知られるアメリカの数学者・建築家バックミンスター・フラー(1895〜1983)によって作られた言葉で、最小の断面で最大の構造物を作るという彼の思想が反映されているが、この構造は複雑で予想のしにくい非線形な挙動や大きな変形を生じやすい点、張力の管理も難しい点や皮膜の劣化による雨漏り等もあって、実際に建築物に利用するには問題が多いとされてきた。
しかし、社会と自然環境に対するコストを最小限に抑えたうえで、全体的な効率を最大限に高めることを前提とする包括的で予測的な「再生的(regenerative)デザイン」、フラーの言葉によると「デザインサイエンス」という概念がこれからの工業化にとって何より重要である。
具体的には、曲げやせん断力を軸力に変換するこの構造は、夢みなとタワー(鳥取県境港市)、下関市地方卸売市場唐戸市場(駐車場棟)の歩道橋、横浜市磯子地域ケアセンター、その他モニュメント等において応用され、効果をあげている。

[青山建築設計事務所 青山昭治