建物の振動を制御するという意味においては、免震・制震・制振すべてが制振という言葉で片付けられる。ただそれでは、制振構造といった場合、何に起因する振動を制御するのかがはっきりしない。そこで日本の構造設計者の大きな関心事である「地震による振動の制御」だけを特別扱いにして免震・制震と呼び、その他の場合を制振と呼ぶ。
地震による建物の振動を制御するのに、建物に入力する振動そのものを制御するのが免震であり、そのシステムは建物と地盤を絶縁するアイソレーターと建物の揺れを吸収するダンパーからなる。アイソレーターおよびダンパーは通常、建物脚部もしくは中間層に設けられた免震層に集中して配置される。
一方、建物内に揺れを吸収するダンパーを組み込み、そこに揺れを集中させることにより建物の被害を軽減するのが制震である。揺れを集中させる制震部材には、自動車などで使われているオイルダンパーや変形能力のある鋼材を用いた鋼材系のダンパーなどがある。
また、建物の設計に関して制振といえば風による揺れを対象とした場合が多い。風制振は通常、建物頂部に建物の揺れを打ち消す方向に移動する重りを設置する。建物の揺れに応じて重りが動くシステムをパッシブ制振と呼び、コンピューター制御で動力を用い、重りを動かす場合をアクティブ制振と呼ぶ。その他の制振としては、床振動、機械・交通振動を対象としたものなどがあり、その方法は対象振動により様々で、構造設計者は、その都度頭を悩まされている。
構造設計者が「せいしん構造」と言ったときに、制震なのか制振なのか、また何に起因する振動を対象にしたものなのか、思いをめぐらせる必要がある。
[大林組本店建築設計部 嶋ア敦志]
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