PMLは、Probable Maximum Lossの略で予想最大損失率と訳され、建物の一般的耐用年数50年間に10%を超える確率で起こり得る最大規模の地震により生ずる予想損失の90%非超過値を表しています。この指標はある想定する地震による被害復旧費用が再建築費用の何%に相当するかを予想した数値です。例えば、再建築するのに100億円かかるビルが地震被害の復旧に20億円必要と予想されれば、PMLは20%となります。このことは、建物の物理的事実を評価するなかで、不動産の資産価値を表す指標となります。
50年間10%の地震とは、建物位置において今後50年間で10%を超える確率で襲ってくると予想される地震動の内、最も大きなものを指します。1年間で発生する確率をP1とすると、1年間で発生しない確率は1-P1、50年間で発生しない確率は(1-P1)50となり、50年間で発生する確率P50=1-(1-P1) 50です。これを逆算すると、P1=1-(1-P50)1/50となり、P50=0.1(50年10%)ではP1=0.002105=1/475となります。よって、これを再現期間475年の地震あるいは475年に一度の地震と言います。
予想損失の90%非超過値とは、損失がその値を超えない確率が90%の損失で、損失には、家具備品等の損失や被災によって建物を使用できなくなるために被る事業損失や人的損失は含まず、建物構造体、内外装、設備等の建物価格に関わる物的損失のみが損失の評価対象となります。
一般的な目安として、PML評価が20%以上になると不動産証券化では格付け低下につながるとされています。今後、PMLの評価を行い、地震保険料の要因を取り入れたトータル建設コストの管理が重要となるでしょう。
[昭和設計構造デザイン室 国友博司]
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