■第66回■ モンテカルロシミュレーション

たまたま強風地域での建物を設計する機会に恵まれ遭遇した言葉で、何か楽しげな響きがありますが、実は当該地域を通過する台風の規模および頻度を推定する台風シミュレーションのことです。
台風の年間の襲来数が少ないことや、気象予測を本来の目的とする気象官署の観測データでは台風による短時間での気象変化に対応できていないことなどから、基本となる風速データに台風時の強風が十分に反映されていないこと。さらに、荷重指針や建築基準法に規定された基本風速は年最大風速に基づく算定であるため、強風の累積作用時間については検討することが難しいことから、このモンテカルロシミュレーションによる強風の推定手法が開発されたそうです。
モンテカルロシミュレーションは上陸台風の性質(年間発生数、進行方向、進行速度、中心気圧低下量、最大旋衡風速半径)を確率分布によりモデル化し、乱数により仮想台風を発生させる手法で、その地域における設計風速、強風の累積作用時間を推定することができます。
今年は台風の上陸数が非常に多く、8月末から9月にかけて16号、18号があいついで西日本に上陸し、おまけにその間で地震まで発生するという異常ぶりを示しています。荷重指針にしろ、建築基準法にしろ、この台風シミュレーションにしろ、過去数十年のデータに基づいて算定される設計風速が今後の異常気象にどう対応していくのか、多少心配なところであります。

[大林組本店建築設計7部 嶋崎敦志]