近年、企業が所有している不動産を証券化して資産の効率的運用を図る動きが活発化している。一般にリート(Real Estate Investment
Trust)と呼ばれている不動産投信は、投資者から集めた資金を賃貸ビル等の不動産で運用し、その賃貸料等を分配金として投資者に支払うという金融商品で、平成13年に東京証券取引所で市場を創設された。いわば上場されている公募の不動産ファンドで、主要株主には大手銀行をはじめ外資や商社、生保、損保、不動産会社等が名を連ねている。
最近では不動産売買は過熱気味で、われわれ建築業界にも少なからぬ影響を及ぼしている。資産評価に関連して建物の診断を依頼されたり、耐震補強や設備改修により建物価値の増進を図ったりすることを行っている。また、目ぼしい不動産物件情報をいち早く入手することが次の仕事に結びつくといった状況である。
またPFI事業等への出資企業の中にもこれらの不動産ファンドが参加している場合が多く見られ、今やリート抜きでは日本の建設投資は考えられない。
一般の銀行金利がほとんどゼロ金利に近い状況の中で、リートだけではなく私募のファンド(プライベートファンド)も多数出現し、不動産の転売益を見こんで一種のバブルの状況を呈している。資産運用の面からやむを得ない現象なのか知らないが、外資を含んだ世界市場相手の金融マネーゲームは、個人的には「実業」ではなく「虚業」のように思われてならない。
[安井建築設計事務所 森田芳次]
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