■第71回■ ドコモモ(DOCOMOMO)

 これは、正式には“The Documentation  and  Conservation of buildings,sites and neighborhoods  of the Modern Movement” (「近代運動」(モダン・ムーブメント)にかかわる建物と環境形成の記録調査および保存)) といい、略称を“ドコモモ”と言います。 
近代運動(モダン・ムーブメント:the Modern Movement)やその理論的な基盤である近代主義(モダニズム:the Modernism)に歴史的価値を認め、それにかかわる建築物や資料を保存することの意義を訴えることを目的とする国際組織です。この組織は、二十世紀の建築の保存を重要視する世界で唯一の組織として、1988年オランダのアイントホーヘン工科大学内に成立されました。「モダン・ムーブメント」は18、19世紀に端を発する合理主義的・社会改革的な思想や技術革新を基礎に、1920年代に西ヨーロッパで明確な形をとり、その後世界に広まった建築(環境形成法)と言われています。このようにモダン・ムーブメントやモダニズム建築は、二十世紀の建築や環境形成の主要な部分をになっていたにもかかわらず、1980年代以降のポスト・モダン旋風により、懐疑的にとらえられているのが現状です。
しかしながら、現在の都市の住まいの中心になっている集合住宅や、働く環境としてのオフィス・ビル、さらには学ぶ場である学校などのこれからのあるべき姿や今後の展開をさぐるとき、それらのいずれもが、原点にモダン・ムーブメントやモダニズム建築を持っていることは、明らかです。
ますます複雑になるこれからの時代を理解し、よりよい環境を形成するためにモダン・ムーブメントやモダニズム建築にかかわる情報をしっかりと蓄積し、顧みようとしている“ドコモモ”のような組織は、今後とも非常に大切であると思われます。

 [大阪市立都島第二工業高等学校建築科 山口繁雄]