たとえば、出張などにより帰宅が遅くなる旨のメモを書いたり、駅へ行く経路を地図に描いたり、昨日のサッカーの試合の様子を身振りで説明したりする、といったように仕事や日常生活の上で、さまざまな情報を何らかの物理的な実体として表現することは、非常にしばしば行われていることです。 「情報デザイン」とは、こうした行為の総体を指しています。現在では、ウェブページを創ったり、電子メールで文章を作ったりすると言ったことがらも含め、身近な生活機器、たとえば洗濯機や電子レンジなどの使用法の表示デザイン、駅の案内板や非常口の表示などの公的なサイン表示のデザイン、ビルの看板や電車内の広告デザイン、さらには雑誌や新聞に掲載される広告のデザイン、プロポーザルをプレゼンテーションすることや教室での授業、博物館や美術館での企画展示あるいは、研究や調査における数値データの可視化などが、この範疇にふくまれます。これらの非常に広い範囲におよぶ活動や現象が、一見すれば違って見えているにもかかわらず、「情報を物理的に表現する」という点では大変に近い関係にあることが、理解されます。 このような視点から、建築の設計や施工といった行為をとらえるとき、「情報デザイン」の考え方が、非常に大きな役割を果たしているのを感じます。つまり、いろいろなケースで用いられてきた方法が、外見も目的もまったく異なる違ったケースに応用できるのではないでしょうか。さらに「情報デザイン」といった視点で考えるとき、建築の設計事務所のみならず建設業において培われてきた諸々のノウハウは、非常に大きな財産として機能するのではないでしょうか。それらのノウハウを、教養や技能のかたちで体系化できれば、現在の建設業の不況にとって何らかの打開策がそこに隠されているように思います。 [大阪市立第二工芸高等学校デザイン科 山口繁雄] |