■第83回■ セレンデピティ(serendipity)

“セレンデピティ”とは、「偶然の幸運に出会う能力」と訳されています。本来、幸運との出会いや偶然は、自分が思いのままにコントロールできない世界に属しています。たとえば、能力が高い人でも幸運に恵まれないこともあり、能力がさほどでない人が大きな幸運に恵まれることもあります。しかしながら「果報は寝て待て」という態度ではなく、とにかく何か具体的な「行動」を起こしていることが最小限必要になります。さらに、「偶然の出会い」自体に「気づく」ことも必要です。この「気づき」は、自分の外で起こっていることや、自分が心の中で感じていることに対する注意深い観察力があって、初めて可能になるのです。つぎに、意外なものとの出会いに際して、素直にその意外なもの受け入れること、すなわち「受容」的な態度も重要です。
このように「行動」し、「気づき」、「受容」することが、「偶然を必然にする」セレンデピティを高めるために非常に大切です。つまり、偶然の出会いがあった時に「それを活かす準備ができている」、また「事後にそれを活かすことができる」能力が求められているのです。これらのことは、建築を設計しデザインを考える時、あるいは現場での施工時に知らず知らずのうちに行っている事ではないでしょうか?つまり、建築に関わっていると言うことが、それぞれのセレンデピティを追求していけるような基本的素養を身につけることにつながっている、と言えるのです。

[建築情報センター委員会 山口繁雄]