最近の白色顔料は、染色系のレーキ顔料やチタン化合物を使用しており、白色を表現することが難しかった漆塗の世界でも白い漆器を製造するまでになっている。 これらの現代的な顔料が使われるまでは、白色顔料の代表格は亜鉛華であり、それ以前は鉛白であった。亜鉛華は合成樹脂塗料が盛んに製造されると共に、盛んに使用されていた顔料であり、鉛白は化粧用の「白粉(おしろい)」でもある。また鉛白と同時に「伊勢白粉」と呼ばれた「水銀白」もある。これらの顔料は鉛毒に代表される様に人体に悪影響を及ぼすと言う事で白粉としても塗料の顔料としても昨今使われなくなった。 鉛やその他鉱物の化合物を使う以前の白色顔料は、奈良時代の古記録を編纂した『大日本古文書』には、天井板を彩色する際に用いた「白土」が記載されており、「胡粉」と呼ばれる貝灰もある。これらの顔料に見られる様に、古代の人々は天然産のエコロジーに優しい材料を使っていた事が判る。 [建築情報センター委員会 神保 勲] |