■第93回■ ミニマリズム(minimalism)

 「ミニマリズム」という言葉は、最小限(ミニマム)にまで切り詰められた美術という意味で、1960年代末までに一般的に使われるようになりました。最小限表現主義ともいわれるミニマリズムは、不必要な装飾や意味のない要素を排除するというデザイン理念です。美術の分野においてはミニマル・アートとも呼ばれ、主な作家としては、ダン・フレイヴィン、ソル・ルウィット、ドナルド・ジャッド、ロバート・モリス、カール・アンドレなどが有名です。建築においても、空間を構成する際にもっとも純粋に思想が反映されたために浸透し、短絡的ですが最小限住宅の方法には、その精神がよく現れているようです。いま流行のWebサイトにおいても、効率よく閲覧する上で不要な段取りや、間違ったナビゲーションを取り除くことが、最小限表現主義にあたり、ここには、先の最小限住宅の方法による手法が応用できます。つまり、ユーザーに直接関係のないテキスト、メッセージや特定の機能を持たない画像の使用を最低限とし、技術等を駆使しユーザーに対して単に感銘を与えるのみの装飾を避ける必要がある、ということを意味します。
建築分野のみならず、現在では無駄をそぎ落として効率のよいシステムが必要とされています。ただし、味気のない世界ではなく、必要最小限で十分に美しく、言葉の深い意味におけるミニマリズムによる素晴らしい建築が希求されているように思います。

[建築情報センター委員会 山口繁雄]