■第94回■ 格差社会

 1990年代バブル崩壊以降の日本経済再建のため、企業の競争力の回復が最優先の政策とされ、またIT化、経済のグローバル化などが進行した結果、数年前から一部のIT・金融関連の業種に携わる階層と、派遣社員・契約社員・パートタイマーなどの非正規雇用者やニートといった階層に二極化される傾向が強くなり社会問題となっています。
「格差」といえば昔は「士農工商」といった厳しい階層(身分)格差がありましたが、現在では賃金格差、雇用格差、教育格差などによる階層格差の拡大が具体的な問題と考えられます。一方いかなる社会体制のもとにおいても格差がなくなったことはなく、存在する格差が社会的に許容される範囲か否かが問題となるのであって、「格差社会」とはある基準により社会を階層化した際に、階層間の遷移が困難な状態が存在する社会であると考えられています。
わが国の現状は、いわゆる高度成長期からバブル期までの主として経済的な発展・成長による、主にサラリーマン層による「総中流化」から、バブル崩壊後「中」の階層意識をもつ層が減って「上」と「下」に二極化しつつあるということです。
人口の高齢化、少子化、グローバル経済化による労働・生産体制の変化などによるワーキングプアの増大と、極く一部のヒルズ族などに代表される階層による謳歌という格差社会の到来を是正すべく、皆で知恵を出し合わねばなりません。

[建築情報センター委員会 森田芳次]