■第97回■ セカンドライフ

 多人数同時参加型の仮想現実世界。ゲームをするわけではなく、米リンデンラボ社が「利用者同士が交流を深めながら作り上げる世界」として03年にサービスを開始。以来、無数の人がこの世界を訪れ“第2の人生”を楽しんでいます。利用者のアバター(仮想の分身)がネット上の仮想空間を歩き、会話し、仮想通貨(リンデン・ドル)で買い物するなど生活を送ります。特徴は、(1)森や店や家や街すべてがセカンドライフの住人によって作られ、常にどこかで工事が行われている世界。誰でも建設に参加でき、自由に理想郷を作り出せるが、建物を作るためには、一定の手続きが必要で、土地をリンデンラボ社から購入する。サーバーメンテナンス費用も月々支払う必要がある。(20住人はこの世界で作ったものに関して知的所有権を持つことができる。(3)実の米ドルと交換可能。
  また、ビジネスモデルとしても利用され、大手ホテルのスターウッドの建設や日産、トヨタは実物そっくりの車を販売。負の面もあります。実際の通貨に交換できるため、犯罪組織の資金洗浄に使われる可能性や、セカンドライフ内で得た収入を税務署が把握できない点です。英米では課税する手段を検討。今夏にも日本語版が登場する予定。現実逃避と見るか、ビジネスチャンスと考えるか。仮想と現実の世界が入り交じり、混沌とした新たな社会が作り出されるのではという不安はあります。
  まあ、たまには逃避世界も悪くはありません。

[建築情報委員会 松本 章]