■第98回■ 里山

里山(さとやま)とは集落、人里に接した山の雑木林や竹林、その周辺の用水池や畑などの生活エリアをさします。人は燃料となる薪や炭、畑に入れる落ち葉、農具や生活用具、山菜や木の実等の食料にいたるまで、生活に必要なものを森から享受し、森は人の手が入ることで植生や生態系のバランスが保たれていました。里山はかつての日本人の生活に密接に結びつき、なおかつそれが長期にわたって循環し維持し続けていた、持続可能な開発(サステナブル・デベロップメント)のひとつのモデルと考えることも可能といわれています。
60年以降の石油エネルギーへの転換、土地開発の進行や過疎化に伴い人の手が入らなくなり放置された結果、里山は荒廃していきましたが環境問題がクローズアップされるのに伴い、豊かな生態系や人と自然とのかかわりなど、里山の持つ価値があらためて認識されるようになり、各地で里山を復活させる動きが活発になっています。最近ではこのような里山の再生を通じて、動植物とのふれあいや自然の学習など、里山を子どもたちの環境教育の場として活用するケースも増えており、里山の役割はかつての人と自然との関係だけではない広がりを見せています。
07年6月のハイリゲンダム・サミットで議題となる生物多様性について、政府は日本人と里山の関係をモデルにした「SATOYAMA(里山)イニシアティブ」を世界に提案する予定で、近い将来里山(SATOYAMA)が世界の共通語になるかもしれません。

[建築情報委員会 栗林 章]