■第99回■ プラズモニクス

 ステンドグラスや装飾品に使用される着色ガラスの鮮やかな色は、ガラスに含まれる金属微粒子の表面プラズモン共鳴によるものです。金属ナノ構造に光を照射すると、自由電子の振動である表面プラズモンが励起され、それに伴いナノ構造に巨大な電磁場が発生します。表面プラズモンを設計し、応用する科学技術はプラズモニクスと呼ばれています。
  従来、金属の光学素子への応用は、反射鏡や回折格子などに限られていましたが、近年ナノテクノロジーの急速な進展でプラズモンを思い通りに操れる結果、応用範囲が広がり、ナノ光源、ナノ導波路、光スイッチング、光増幅、センサー、等々のナノフォトニクス素子の実現に寄与することが可能です。
  また、プラズモンは電子本体が動く速度よりも速く伝わるので、従来の電子回路よりも桁違いに大量のデータを高速伝送する道が拓けます。実験室では、光信号をプラズモンの形でナノサイズのワイヤーに押し込め、高速伝送することに成功しています。
  応用は、コンピューターにとどまらず、医療分野ではナノシェルという超微粒子に光を照射し、プラズモンを発生させ、腫瘍を破壊する治療法の研究が進んでいます。発光率の高いダイオード、高感度センサーなどが有望視されています。
金属ナノと光が生み出す現象は、無限の可能性を秘めており、次世代の光科学技術と言えます。

[建築情報委員会 五宝 久充]